市房山神宮拝殿
建物データ
指定名称 | 市房山神宮拝殿 寛永8年(1631) 桁行九間、梁間三間、一重、入母屋造、鉄板葺 |
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指定年月日 | |
所在地 | 水上村大字湯山 |
修理記録 | |
保存修理工事報告書 |
市房山神宮拝殿正側面
『麻郡神社記』によると当社は、市房大権現と称され別当は湯前町古城に在った普門寺で、日向国諸縣郡霧島神社と同体です。
市房山神宮は市房山の四合目に在ります。市房山は山自体がご神体で、古くから山岳信仰があり、修験者の修行が盛んでした。
現在は朱色のペンキが塗られていますが、元は黒漆塗であったとみられます。モルタルで塗り込まれた部分の部材の蟻害が懸念されます。
市房山神宮拝殿正面
『御修理場御本帳写』(各所に分散して所蔵されている相良家文書の内、広島大学中央図書館が所蔵する「相良文書」179号として架蔵されている史料、亨保13年1728)によると、
かやふき
ヽ一 三間梁 五間 拝殿 但かや修りハ普門寺より
かやふき(改行) ヽ一 三間梁 六間 御供所 但かや修りハ右同断
ヽ一 廊下有り 樋掛ケ四間 但拝殿御供所之合
くれ板ふき
ヽ一 縣ケ出 壱間角 湯殿
ヽ一 石垣之上らんかん 拾五間
ヽ一 御神ノ社 弐ヶ所 五尺四面市房壱社
秡川壱社
現拝殿は本殿側五間が拝殿、奥の三間は御供所であったとみられますが、『御修理場御本帳写』とは御供所の規模が異なっています。しかし、「ヽ一 廊下有り 樋掛ケ四間 但拝殿御供所之合」の記述は、現在の出入口と御供所三間に廊下があり、ここには雨樋が掛けられていたとみられますので、桁行の規模が六間であるのは他に附属していた部分がカウントされているのかも知れません。
湯殿がどこにあったのか、また誰が使っていたのか今後の調査が待たれます。人吉市の岩屋熊野座神社拝殿にも湯殿のような部屋があります。
市房山神宮拝殿本殿側
小壁は格子に輪宝と丸に八葉菊の文様が2つづつ交互に配されています。
市房山神宮拝殿現入口
現入口から入ると一間奥は開放となっていますが、三本溝の鴨居と長押が残っていますので、この通りには三枚引違いの建具が入っていたようです。拝殿側は無目鴨居と長押ですので、間仕切はなかったとみられます。
市房山神宮拝殿内部
写真奥が本殿側です。床はモルタル仕上げに改修されています。
市房山神宮拝殿現入口廻り
現入口から入ると一間奥に三本溝の鴨居と長押が残っていますので、三枚引違いの建具が入っていたようです。拝殿側は無目鴨居と長押ですので、間仕切はなかったとみられます。
市房山神宮拝殿神供所内部
現入口入側から続く三間は二本溝の鴨居と長押が残っていますので、二枚引違いの建具が入っていたようです。こちらも床がモルタル仕上げに改修されています。
部屋の中央付近に囲炉裏とみられる跡が残っています。
市房山神宮拝殿天井
拝殿は棹縁天井で入側は天井板を矢筈張りとしています。
市房山神宮拝殿内部側小壁
拝殿内部側は頭貫下の小壁板に浮彫りが施されています。
市房山神宮拝殿入側外側小壁
市房山神宮拝殿入側外側は頭貫上の小壁板に浮彫りが施され、頭貫下の小壁は格狭間が彫られています。
市房山神宮拝殿古写真
写真を見ると側廻りには間仕切壁や窓がありません。入側は何らかの間仕切が見えますが、入側は無目鴨居ですので建具ではないかも知れません。入側柱には切目長押が取付けてありますので、入側は縁であったようにみられます。