築地熊野座神社本殿

建物データ

指定名称 築地熊野座神社本殿   宝暦10年(1760)、棟札
三間社流造、桟瓦葺、南向
指定年月日
所在地 あさぎり町甲
修理記録 昭和28年 1月18日 本殿屋根瓦葺替
昭和57年11月 9日 本殿屋根葺替
向拝西柱:根継
側面下屋・周囲鉄柵・ブロック塀:新設
平成 5年:境内整備
保存修理工事報告書 未出版

築地熊野座神社境内

築地熊野座神社境内

『麻郡神社記』によると当社は紀州牟婁郡熊野速玉神社と同体で、正慶年中(1332~1333)の草創で、文明年中(1469~1486)に再興されています。始めは久木崎寺と号す時宗の別当がりました。
現在の本殿は棟札により宝暦10年(1760)に建立されたことが判ります。建物各部材の意匠と年代的な矛盾はないとみられます。

築地熊野座神社本殿側面

築地熊野座神社本殿側面

雨落の近くに礎石らしきものが残っていますので、以前は覆屋があったとみられます。

築地熊野座神社本殿向拝

築地熊野座神社本殿向拝

化粧垂木が棒垂木となっていますので、屋根修理時に取替えられたと考えられます。

築地熊野座神社本殿妻飾り

築地熊野座神社本殿妻飾り

大瓶束を受ける蟇股の意匠は1750年代の指標となるものです。

築地熊野座神社本殿向拝蟇股

築地熊野座神社本殿向拝蟇股

蟇股上部と中央部の幅はほぼ同じです、これ以降に中央部の幅を縮める意匠となっていくようです。

築地熊野座神社本殿木鼻

築地熊野座神社本殿木鼻

山江村の万江阿蘇神社本殿の木鼻と輪郭の構成は同じですが、渦の外側の円弧部分の曲率が小さくなり外側に出ています。

築地熊野座神社本殿向拝木鼻

築地熊野座神社本殿向拝木鼻

木鼻上部はリーゼントの髪型のような意匠で、その下の円弧部分の渦は円弧ではなく木瓜文のような形となっています。
上部には輪郭から離れた渦が彫られています。

築地熊野座神社本殿格狭間

築地熊野座神社本殿格狭間

格狭間は彫られたものではなく、隅で輪郭や内部の直線を描きその内部を塗装しているようです。

建物情報

※情報の内容は調査・研究成果によるものです。

平面計画と柱断面寸法 築地熊野座神社本殿
『中世等文化遺産保護対策事業調査報告書』(平成8年3月、熊本県教育委員会)の図面を見ると、正面規模は3,590㎜(11.847尺)、中央間1,200㎜(3.96尺)、身舎側面二間1,475㎜(4.875尺)、向拝奥行985㎜(3.25尺)となっています。各柱間寸法は現行尺(1尺303.03㎜)で整理されたものではないようにみられます。
ここでは鉄尺(1尺302.58㎜)で分析します。正面規模は11.865尺で裏目にすると8.39裏尺、中央間と端間は5㎜の差がありますが等間と考えられますので、各間は2.7966・・・裏尺で1.4㎜の差がありますが、2.8裏尺とみられます。身舎側面は4.875尺で裏目では3.447裏で3.45裏尺と考えられます。向拝奥行は3.255尺で裏目では2.302裏尺で2.3裏尺とみられます。正面規模と身舎側面は整数比ではなく、身舎側面は正面規模から1.5裏尺引いた柱間寸法としています。向拝奥行は正面各間の2.8裏尺から0.5裏尺を引いた2.3裏尺としています。これはこの後に建てられた秋時諏訪神社本殿も向拝の奥行は正面柱間寸法から0.5裏尺を引いた平面寸法としています。
では正面の規模をどのように決めたのか推測すると、大まかに隅柱外々を9尺として15等分し14小間(8.40尺)を柱真々寸法にしたと考えられます。
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