井口八幡神社神殿
建物データ
指定名称 | 井口八幡神社神殿 神殿 三間社流造、とち葺 元禄12年(1699)、墨書 覆屋 桁行四間、梁間四間、切妻造、鉄板葺 元禄12年頃(1699) 拝殿 桁行七間、梁間三間、寄棟造、桟瓦葺、正面向拝一間、唐破風造、鉄板葺 元禄12年頃(1699) 神供所 桁行七四間半、梁間二間、切妻造、茅葺、桟瓦葺 元禄12年頃(1699) |
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指定年月日 | 昭和37年9月10日 |
所在地 | 人吉市井口町 |
修理記録 | 覆 屋:昭和22年に屋根を鉄板葺に変更 拝 殿:昭和22年に床組、小屋組、屋根、建具、窓廻り、天井を改造、向拝増築 神供所:昭和22年に床組、小屋組、屋根、建具、窓廻り、天井を改造 |
保存修理工事報告書 | 未出版 |
井口八幡神社社殿
井口八幡神社は『麻郡神社私考』によると相模ノ国鎌倉鶴ヶ岡八幡宮と同体で、室町時代の応永7年(1400)に藩主藤原(相良)頼親により勧請され、その後何回かの修復を繰り返し、元禄12年(1699)の火災により本殿、拝殿、御饌屋(神供所)等がことごとく焼失しました。同年に藩主藤原(相良)頼喬により再興さたれたのが現在の社殿です。
井口八幡神社神殿・覆屋
本殿は覆屋が同時期に建てられていますので保存状態は良好です。
井口八幡神社神殿正面
漆塗や彩色部分もよく残っています。
井口八幡神社神殿妻飾
雨が直接当たっている部分は漆塗や彩色がなくなり、木地が露出しています。
井口八幡神社神殿向拝
木鼻(柱の頂部から横に出ている部分)は上下で異なる意匠が組み合されています。上半分はばくか象にのようで、下は禅宗様の木鼻となっています。
井口八幡神社神殿木階・縁
木階(階段)脇の高欄架木(手摺)が失くなっています。
井口八幡神社拝殿
基壇の上に建つ拝殿は人吉球磨地域では最大規模です。
井口八幡神社神供所
神供所も基壇上に建ち、こちらも人吉球磨地域では最大規模となります。
建物情報
※情報の内容は調査・研究成果によるものです。
本殿屋根材 | 本殿の屋根は栩板(とちいた)を用いた栩葺(とちぶき)です。栩板の厚さは9㎜(3分)~30㎜(1寸)のものがあり、厚さにより三分栩板、一寸栩板の名称があります。幅は90~150㎜、長さは636㎜以下で、屋根面を階段状に重ねて葺ます。葺足(階段の水平部分)は一寸栩板は三寸(91㎜)、五分(15㎜)栩板は二寸(61㎜)、三分栩板は一寸五分(45㎜)という標準的な仕様があります。 |
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平面計画と柱断面寸法 | 井口八幡宮の平面計画を『中世等文化遺産保護対策事業調査報告書』(平成8年3月、熊本県教育委員会)の実測図を精査して分析してみます。 本殿は南向きに建てられ、正面三間分の実測値は4,000㎜、中央間1,880㎜、端間1,060㎜、側面二間はそれぞれ1,536㎜、正面身舎柱から向拝柱まで1,757㎜です。鉄尺(1尺302.58㎜)に換算すると三間分13.22尺、中央間6.213尺、端間3.503尺、身舎側面二間は5.076尺、正面身舎柱から向拝柱まで5.807尺となります。正面中央間を6.2尺、端間を3.5尺と考えると中央間は16枝、端間は9枝となっているので、一枝寸法は中央間0.3875尺、端間は0.38888..尺で循環小数となります。 そこで、裏目尺(表×√2)に換算すると中央間4.393裏尺、端間2.477裏尺、それぞれ4.4裏尺と2.475尺とみなすと一枝寸法はそれぞれ0.275裏尺となります。正面三間は34枝で9.35裏尺で、ミリメートルに換算すると4,001㎜です。側面二間はそれぞれ3.59裏尺で3.575裏尺とみなすと13枝分の長さになります。身舎柱の太さは9.35裏尺/20(1.7小間)で0.4675裏尺(200㎜)、向拝柱は一枝寸法×1.2の0.33裏尺としているようです。 それでは、本殿の正面規模はどうやって決めたのでしょうか。本殿だけでは判りにくいのですが、同時期に建てられた拝殿も含めて分析すると、本殿の身舎柱は11裏尺を40等分したグリッド上に建てられているようです。1小間は一枝寸法と同じ0.275裏尺で、三間分は34小間、中央間16小間、端間9小間、側面二間は13小間です。 拝殿正面は三間分42小間11.55裏尺で、中央間は本殿正面中央間と同じ16小間4.4裏尺、端間は本殿側面と同じ13小間3.575裏尺とみられます。桁行方向は三部屋に間仕切られ、正面側と本殿側は9.3裏尺(本殿正面三間-0.05尺)、中央の部屋は50小間13.75裏尺で、本殿向拝柱から拝殿の本殿側の柱まで30小間8.25裏尺とみられます。 神供所梁間方向は拝殿正面側の間桁行方向と同じ9.3裏尺で、桁行方向の拝殿隣の合の間は4.8125裏(17.5小間)、中央三間は13.75裏尺(50小間)、三間等間ですので4.5833裏尺、東端の出入口が2.55裏尺で桁行は21.1125裏尺とみられます。 覆屋桁行は現行尺6.5尺の四間で26尺、梁間は現行尺7尺の四間で28尺として作図されています。 |