岩屋熊野座神社

建物データ

指定名称 重要文化財岩屋熊野座神社 6棟
中央殿                    天正年間(1573~1591)
一間社見世棚造、板葺
左 殿                     天正年間(1573~1591)
一間社見世棚造、板葺
右 殿                     享保12年頃(1727)
一間社見世棚造、板葺
拝 殿                     享保12年(1727)、小屋貫墨書
桁行六間、梁間三間、入母屋造、向拝一間、茅葺
覆 屋                     享保12年頃(1727)
桁行三間、梁間二間、切妻造、茅葺
鳥 居                     元禄14年(1701)、刻銘
石造両部鳥居
柱に元禄十四辛巳三月吉日の刻銘がある。
  附・旧扁額 1面
附・相殿 2棟 左殿 一間社見世棚造、こけら葺
     右殿 一間社見世棚造、板葺
  棟札 1枚 亨保十二丁未年四月九日
指定年月日 平成14年12月26日
所在地 人吉市東間上町
修理記録 平成23年(拝殿・覆屋・鳥居)
保存修理工事報告書 平成24年3月31日出版

岩屋熊野座神社社殿

老神神社社殿

江戸時代は修験道の寺としての南龍寺が岩屋熊野座神社の別当でした。南龍寺は明治の廃仏毀釈で廃寺となったと考えられます。

岩屋熊野座神社中央殿

老神神社本殿・覆屋

中央殿と左殿は人吉市球磨地域の独特な形状の木鼻が、同時代に建立されたものと類似していることから建立年代が推定されています。現在の向拝の蟇股は後に取り付けられたものです。

岩屋熊野座神社左殿

老神神社拝殿・神供所正面

中央殿正面の柱真々寸法は1,475㎜前後で、左殿正面の柱真々寸法は1,311㎜前後ですので、寸法比は中央殿9:左殿8となります。相良村の井沢熊野座神社中央殿と左右殿の正面柱間寸法比は中央殿6:左右殿5となっています。

岩屋熊野座神社右殿

老神神社拝殿側面

建立年代が中央殿・左殿と異なるので、正面の柱真々寸法は中央殿との寸法比ではなく1,364㎜(4.5尺)としているようです。

岩屋熊野座神社拝殿

老神神社神供所

保存修理工事では解体修理とし建立当初の姿に復原され構造補強が行われました。

岩屋熊野座神社覆屋

老神神社神供所

保存修理工事では解体修理とし建立当初の姿に復原され構造補強が行われました。

岩屋熊野座神社鳥居

老神神社神供所

鳥居は石造両部鳥居で元禄14年(1701)の造立で、人吉市球磨地域で年代の判明している鳥居としては最古です。

建物情報

※情報の内容は保存修理工事報告書、重要文化財の指定説明とその後の調査・研究成果によるものです。

大工棟梁 拝殿:稲富覚左衛門
本殿平面計画 岩屋熊野座神社本殿平面計画
修理工事報告書に記載された平面寸法を鉄尺(1尺302.58㎜)で分析してみます。
中央殿身舎柱は柱間寸法を分析すると0.125尺のグリッド上に建っていると推測されます。正面隅柱真々は5尺弱ですので、正面隅柱真々(桁行)を5尺と仮定し40等分すると1小間は0.125尺となります。設計では正面39小間4.875尺(1,475㎜)、側面35小間4.375尺(1,324㎜)とみられます。向拝奥行は向拝柱前面までを18小間2.25尺(681㎜)とすると、向拝柱断面寸法は123㎜で0.4尺(3.2小間121㎜)とみられますので、向拝柱真から身舎柱真までは2.05尺(620㎜)となります。正面隅柱間は18枝ですので、一枝=0.27083尺で端数が生じます。身舎柱断面寸法は図面では144㎜で鉄尺に換算すると0.47591尺となり、3.8小間(0.475尺143.7㎜)とみられます。
   左殿身舎柱間寸法は中央殿の柱間寸法から4.5小間(0.5625尺170㎜)縮小し、正面規模(桁行)34.5小間(4.3125尺1,305㎜)、奥行(梁間)30.5小間(3.8125尺1,536㎜)とし、向拝奥行は向拝柱前面までを18.5小間(2.3125尺700㎜)とし0.5小間分伸ばしていると推測されます。図面での向拝柱断面寸法は118㎜ですが、3小間と考えると0.375尺(113.5㎜)で、向拝柱真から身舎柱真までは2.1175尺(641㎜)々となります。身舎柱断面寸法は136㎜(0.45尺)と記載されていますが、3.5小間と考えると04375尺(132㎜)となります。
  右殿は中央殿や左殿と150年前後時間差がありますが、柱間寸法や柱断面寸法を分析すると小間が関係していると推測されます。右殿正面規模(桁行)36小間4.5尺(1,362㎜)、奥行(梁間)33.5小間(4.1875尺1,267㎜)、向拝奥行は向拝柱前面までを18小間(2.25尺681㎜)と推測されます。図面では向拝柱断面寸法は114㎜で、3小間と考えると0.375尺(113.5㎜)で、向拝柱真から身舎柱真までは2.0625尺(624㎜)となります。身舎柱断面寸法は129㎜(0.42633尺)と記載されていますが、3.4小間と考えると0425尺(129㎜)となります。
拝殿・覆屋の建立当初の「ものさし」 岩屋熊野座神社本殿平面計画
修理工事報告書の実測値を鉄尺(1尺302.58㎜)に換算した略図を掲載しました。
拝殿は3ヶ所が設計寸法と合致しますが、その他は現行尺よりも長い柱間寸法となっています。
覆屋桁行方向は設計寸法の6ヶ所中4ヶ所が合致していますが、梁間方向はほぼ0.01尺長くなっています。建立当初の「ものさしは」覆屋に関しては鉄尺とみなせます。
番 付 覆屋は北西隅(正面右角)を起点に時計回り
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